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バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

東京スポーツのインタビュー

  ギリシャのアテネ目指してある若者がヒッチハイクの旅に出る。
 
  
彼はいさぎよく会社を辞めた。
 むしろ、組織の中でもがき苦しんだサ

ラリーマン生活に未練などないと言い切る。
 若者は今月の25日、東

京・上野から、記念すべき第一歩を踏み出す。
 彼が決断した一つの分

岐点は、いずれ我々サラリーマンにもくるのだろうか。
 彼の行為を単

なる”若さ”からだと言い切れるだろうか―。


       

  ≪出世コースを放棄してまで≫

若者の名は東川義彦君(24)。

独身。二部上場の建設会社に勤め、一応○○―○コースを歩んでいた。将来

の生活も保証され、企業の一員としてソツなく勤め上げれば、世間で言う幸

せな家庭をもち、人並みに老後の問題を考えながらサラリーマン生活を送れ

たはずだ。

     

  <ええ、別に先のことは考えてもいません。考えたってしょうがない

し、人間って考えれば考えるほど、慎重になっちゃうでしょ。>

 

「どうかなあ。会社辞めたい、と思うのはしばしばですよ。だけど退職届を

出した所で、働き口を探すのは面倒。それに妻子があれば、なおさらのこ

と。会社がつぶれない限り、一生食い扶持を保障してくれるんだから、すが

り付いていれば楽。と、あきらめているのが本音ですよ。」(あるサラリー

マン氏、30歳)



 やはり自由のきく若さからくるのだろうか。しかし、彼にとって若いから

というのは問題外なのである。遅かれ早かれ、サラリーマン生活に見切りを

つけていたのだ。



   <大学卒業してある建設会社の住宅部住宅設計課に入社しました。初

任給の手取りは八万円ほどでしたか。大企業とはいかないまでも、二部上場

している会社だし、このままずっとすがり付いていたら、楽だとおもいまし

たね。>



 「僕も若いほうですよ。しかし公務員と言う安定した職場にいると、妙に

辞められなくなってしまうんですね。一度辞めてまた試験を受ければ良いん

だけど、これと言って飛び出す理由もないし・・・・・・。」(東京・足立

区立図書館勤務、石塚さん、28歳)

  

 <入社時の配置で、本社勤務に命じられたのは、僕は僕なりに少なくとも

○○―○コースに乗っかれたのだろうと言う気はしましたね。同期の多く

は、現場の監督者として地方にいかされていったから。>

 が、た

とえそうしたレールが引かれていたとしても、むしろ逆に覚めることのほう

が強かった。なぜ?組織の中を知れば知るほど、自分が潰されていくことに

気がついたからだ。



    <上司に自分の意見は通らない。かといって、それに反発する、こ

うした社員も少ない状況をまのあたりで見ていると、いずれ、僕も無気力に

なってしまうと考えただけで怖くなりましてね。>

       

   ≪”大樹の陰よりも生きがい”≫

  

 ・・・・・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・・・・・・



 ただ、いずれは独立して設計事務所を開きたいのが夢だった。だ

から、いつかは企業を飛び出さなければと決心はしていた乾さん。その時期

があまりにも早く訪れてしまった訳なのだ。

   

  <それから、資金集めに、全く畑違いの会社に入りました。それも前の

職場では経験しなかった営業の仕事。僕にできるかな、と内心不安でした

よ。でも、何事も経験ですから。やる気さえあったら、何でもできる。そう

自分に言い聞かせ、頑張ったんです。>



 勤務して一年。月収は歩合制で、平均月収は二十万円ほど。仕事の贅沢を

言わなければ、それで十分満足なはずだった。
が、その会社も辞めた。

アテネまでヒッチハイク旅行に向かう為であった。



     <学生時代に日本ヒッチハイカ―連盟に入りましてね。よく企画

があると参加していたんですよ。だけど就職してからは自由がききませんで

したからね。ずっとご無沙汰していたんです。>

        

    ≪「失敗して欲しい」という声も≫



 今回の企画は、連盟の五周年を記念して計画された海外遠征レース。彼を

含めて七人の若者が参加する。

  

   <行って見よう。そう心に決めたのは、何か物足りなかったサラリー

マン時代を見つめ直して見たかったからなんです。ヒッチハイクって言うの

は。お金さえあれば大きな顔をして、どこでも行けるのに、わざわざ他人の

親切を頼りに行動するんですからね。>



 「ボクは、あまりにも短絡しすぎるんじゃないか、と心配ですね。甘える

な、って言いたいな。サラリーマンが会社組織の中で反発し、飛び出して行

く勇気は、ある程度持つべきだと思う。しかし、だからと言って、無計画に

行動する事が、自分の向上につながると考えるのは。危険だね。それも海外

に出て行くんでしょ。日本と同じように、事はうまく運ぶはずはないです

よ。失敗して引き返してくれる事を望みますね。危険がありすぎる。」(評

論家・大野明男さん)



     <普通の旅行って、自分の生活を安全な形でおいたまま、移動す

る事なんですね。しかし、ヒッチハイクは、移動そのものが生活なんです

よ。今日はどこまで行けるかわからない。時たま見知らぬ土地の山中を夜中

テクテク歩く事がある。そんなとき”ああ、俺は生きてるんだなー!”って

実感が湧いてくるんですよ。>

 乾さんにとって、日本に舞い戻っ

てきた先のことは、全て白紙だ。次のことを考えて行動していては何もでき

ない、が彼の信条である。またサラリーマン生活に戻るのかどうかも、自分

自身で解からない。ただ、自分で選んだこの行動が、よりプラスになること

だけは信じている。

      

      ≪あなたは今会社を辞められるのか?≫

      

     「昭和○○年7月14日、水曜日  東京スポーツ」より


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